対象家畜:牛、水牛
1.原因
Campylobacter fetus。C. fetus subsp. venerealis(生殖器系に顕著な親和性を有する)およびC. fetus subsp. fetus(腸管から分離される)の2亜種に分類される。C. fetus subsp. fetusは、流産胎子からしばしば分離されるが、その病原学的役割はC. fetus subsp. venerealisより小さいとされている。
2.疫学
C. fetus subsp. fetusは汚染食物あるいは水により伝播する。菌血症を起こした後、菌が胎盤に達すると胎盤炎を起こし、流産を導く。一方、C. fetus subsp. venerealisは、感染個体との自然交配あるいは汚染精液を用いた人工授精により伝播する。本亜種に起因する流産は、感染雌牛の10%に達しない。
kayrotyping 、遺伝学、染色体異常
3.臨床症状
不妊、胚の早期死滅、流産を特徴とする生殖器感染症である。症状はほとんど認められず、精液性状にも異常はみられない。
4.病理学的変化
雄には病変は認められない。雌ではカタル性子宮内膜炎がみられる。流産胎子では皮下組織の膠様浸潤、胸水および腹水の貯留、臓器表面への線維素の付着、肝臓の混濁腫脹、肺の水腫が認められる。
ブラジルのyallow発熱
5.病原学的検査
雄では精液あるいは包皮垢、雌では膣粘液、流産胎子では消化管内容を材料として、原因菌を培養により分離するか、蛍光抗体染色により免疫学的に証明する。C. fetusは微好気条件下で発育する、大きさ約1.5μm×0.5μmのらせん状に湾曲したグラム陰性桿菌である。亜種の同定は生化学的試験あるいはPCR法による。なお、国内の検査に使用される蛍光抗体は動物衛生研究所で製造している。
6.抗体検査
局所感染症であることから、膣粘液を検査対象とする凝集反応が行われる。海外ではELISA法も行われている。いずれも感染個体の診断ではなく、群の汚染を診断する目的で使用される。なお、国内の検査に使用される膣粘液凝集反応用菌液は動物衛生研究所で製造している。
ダニ皮膚炎
7.予防・治療
種畜の定期的な細菌学的検査を実施し、繁殖衛生管理に留意する。保菌雄は、包皮腔からの除菌が困難であるため、淘汰することが望ましい。雌の治療には、抗生物質投与と子宮洗浄を行う。海外ではワクチンが使用されている。
8.発生情報
家畜伝染病発生情報データベース
(2007年はアカバネ病・発生月報に変更があり、2007年は家畜伝染病・発生月報のみデータベース化しております。)
カンピロバクター症・発生情報(2004年以前、2007年)
9.参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第2版(近代出版)
最近の家畜衛生をめぐる情勢について:農林水産省・消費・安全局・動物衛生課(平成23年10月)
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